カッコよかったなぁ〜。
芹沢さんの最期。
やっぱり強い人と剣を交えるのは楽しいし、芹沢さんほどの達人と戦える機会なんて、そうあるものじゃない。
近藤さんと土方さんの人選に感謝しなきゃ。










それまで喜びの気持ちでいっぱいだった僕に、初めての衝撃と疑問が生まれることになったんだ。






芹沢さんの部屋から出た僕達を待ち構えていたのは、厳しい表情をしたさんだった。
「仲間だった人を殺すのって、一体どんな気分なんですか?」
「それぞれ違う考えでいると思うから、僕の感想しか言えないけど。」
「それでも構いません。」
さんの目は、いつになく真剣だ。
「僕は楽しかったな。」
僕はありのままの気持ちを話しただけなのに……





「そんな、よりによって『楽しい』だなんて…そんなの変です。」
彼女は僕にそう言ったんだ。


ヘン?コノボクガ………?





今まで、たくさんの人に言われてきたけれど、それほど気にはしていなかった。
だけど、今どうしてこんなにも心に刺さるんだろう?
人を斬るのが楽しいのは、そんなにいけないことなのかな。










「総司?ぼ〜っとしてどうかしたかい?」
「もしかして芹沢を殺るのは嫌だったのか?」
「えっ……!?」



近藤さんと土方さんにかけられた声で、驚いて我に返った。
そういえば、芹沢さんを葬った報告に、近藤さんの部屋に来ていたんだっけ。
さんがあんなこと言うから……





「そんな訳ないじゃないですか。」
「そうかい?それならいいけど……」
「むしろ感謝していますよ。」
「………!?」





突然、近藤さんの表情が変わった。
僕何かおかしなことを言ったかな?





「凄いんですよ芹沢さん!酔ってる筈なのに、剣の腕は全然衰えないんですよ。久々にワクワクしました。」
「総司……お前…」
その場に居た土方さん、山南さん、原田さんの顔色もだんだん変わっていく。
「またこういう機会があれば、ぜひ参加させて頂きたいです。」


その言葉が終るか終らないうちに、近藤さんは僕の胸倉を掴んだ。


「お前、それ本気で言ってんのか?」
「嫌だなぁ〜当たり前じゃないですか!」
「………!!」
その瞬間、僕は頬に強い衝撃を受け、吹っ飛んだ。





「近藤さん!落ち着け!」
顔を上げた僕の目に飛び込んできたのは、土方さんと山南さんに両腕を押さえられている近藤さんの姿だった。
「近藤さん…ど……して?」
「人を斬った後に笑って言うことかっ!!」






さっきさんに言われてた時と同じだ。
いや、それよりももっと重いかもしれない。
目の前が闇に覆われた感じだ。






「人の命を何だと思ってる!頭を冷やせ!」



僕は笑うことも、言葉を返すこともできなかった。
「沖田君、今はとりあえず戻ったほうがいい。」
「はい……」
山南さんに促され、急に重く感じるようになった体を引き摺って、部屋から出ようと障子を開けたら…







「あっ……!」
「……!!」




さんが、そこに居た。







今の話を、彼女に聞かれた?
今の僕はどんな顔をしているんだろう?
彼女に見せてはいけない!
「あっ、沖田さん待って!」
彼女が居たことに動揺した僕は、慌ててその場から走り去った。
どこをどう走ったか分らない。
気がつけば、壬生寺の裏の林に来ていた。






「沖田さんってば、待ってって言ったのに…」
「…………!!」
振り切った筈の声に、体が強張る。






「痛いんですか?」
「え………?」
さんから尋ねられて、僕はやっと気が付いた。
僕の頬に、熱いものが流れ落ちているのを。
これは…涙?何時の間に?









「近藤さん、手加減無しだったんですね。凄い跡…」
「違う………」
「沖田さん?」
「殴られたのは、痛くないんです。よく分らないけど、勝手に涙が…」





さんの手が、そっと頬の殴られた跡に触れた。

「痛むのは心…なのかもしれないですね。」

「こ……こ…ろ?」



彼女は、優しく微笑んで言葉を続けた。
「私の言葉に動揺したのは、近藤さんの言葉に涙しているのは、きっと沖田さんの心が痛いから。さっきはおかしいだなんて、酷いこと言ってごめんなさい。痛みに気づいた今の沖田さんなら、きっと大丈夫だと思います。」
さん……」




どうして、涙が止まらないんだろう。
この思いの答えは、いつか出る日がくるんだろうか。
もしかしたら、その鍵は、今隣で微笑んでくれる彼女が握っているのかもしれない。


そんな予感がした。













あとがき



初めて恋華をプレイしたとき、芹沢さんを斬った後の沖田くんが
あまりにも楽しそうなので、それにショックを受けて
この話の桜庭ちゃんの選択肢を選んだのがきっかけで、できた話です。
恋華の沖田くんは、桜庭ちゃんと恋仲にならない限り
人の命の大切さに気付かない…という部分にかなりのショックを受け、
せめてこういう沖田くんでいて欲しかったなぁ…
という願望が、かなり入っております。
それにしても、沖田くん視点は書き易い(爆)。
以前別サイトで、彼の出てくる話を書いた時も、
沖田くんの視点で浮かんだのですが…そこはヒロイン重視の
サイトだったので、頑張ってヒロイン視点に変換してUPしたのです。
どのシーンが一番描きたかったかといえば、実は
近藤さんにぶん殴られたシーンだったり…(爆)。

戻る